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南充浩note:オゾック、アクアガール廃止にみる人口問題とアパレルの不都合な関係

このところ、著名ブランドの廃止が立て続けに発表されています。ジャパンイマジネーションは、CECIL McBEE(セシルマクビー)を含むほぼすべてのブランドの実店舗とネット通販を廃止し、4ブランドだけを残すと発表しました。また、ワールドは、オゾック、アクアガールなど5ブランドの廃止を発表しました。1990年代後半を象徴するような3ブランドが無くなることは、一つの時代が終焉したと感じられてなりません。

社長交代で「聖域」に大ナタ

セシルマクビーといえば、1990年代後半から2000年代半ばにかけて「渋谷109」で一世を風靡したレディースブランドです。また、オゾック、アクアガールも90年代半ばから2000年代半ばにかけて人気の高かったレディースブランドで、いずれも今の40歳代~50歳代前半にかけては、若い頃に愛用したという人も多いのではないかと思います。

もちろん、新型コロナによる消費低迷が最後のトドメを刺したことは言うまでもありませんが、3ブランドとも近年売上高はピーク時から大幅に減り、収益性も悪化していたため、新型コロナショックが無かったとしても数年後には同様の発表となったと考えられます。

それにしても、近年の業績低迷はともかくとして、90年代後半を象徴するような3ブランドが無くなるということは、一つの時代が終焉したと感じられてなりません。

セシルマクビーが無くなるということは、実は5月の連休くらいから耳にしていました。ジャパンイマジネーションが廃業する、解散するという類の噂でした(実際は廃業や解散ではなく、ブランド運営を停止しライセンス管理のみを行うことに)。

どうしてそのような噂がまわるのかというと、セシルマクビーは主に商業施設内に出店していましたから、閉店するとなると家主に早めに挨拶をしなくてはなりません。
そのため、商業施設側は一早く知っていて、そのあたりから業界に噂が広がったと考えられます。

セシルマクビーは90年代後半から2005年くらいにかけて、セクシーカジュアル系ブランドの筆頭格として10代後半から20代前半の若い女性に大人気でした。このときの主要顧客は現在、40歳以上になっています。同じジャンルの「109系」では、エゴイストやココルル、マウジーなんていうブランドも人気がありましたが、エゴイストとココルルはさっぱり名前を聞かなくなりました。
マウジーとセシルマクビーは息が長いといえます。息の長かったセシルマクビーですが、ピークは2005年ごろで、近年ではピーク時の半分程度にまで売上高は低迷していました。

ワールドのオゾックとアクアガールも90年代半ばは超人気ブランドでした。オゾックのスタートは93年。ワールド初のSPAブランドとして生まれ、大ヒットとなりました。オゾックの成功がワールドを卸売りニットメーカーから、SPA型総合アパレルへと変貌させたと言っても過言ではありません。

この当時の記憶は今も鮮明に焼き付いていますが、すでに94年・95年には大人気SPAレディースブランドになっていました。ディレクターにはデザイナーの田山淳朗氏が就任し、いわゆる独立系デザイナーらしいクリエイティブな商品デザインと店舗内装だったことを強烈に覚えています。

アクアガールは95年にスタートしたセレクトショップ業態。これもワールドとしては初の試みだったといえます。卸売りニットメーカー、SPA型アパレルと二つの顔を持ったワールドでしたが、今度は仕入れ型専門店という業態に進出したわけです。これも感度の高い若い女性にあっという間に大人気となりました。

近年のブランド業績が低迷していたことは知っていましたが、ワールドの社員によると「過去の成功からオゾック、アクアガールともにいつの間にかアンタッチャブルな『聖域』化していたが、新社長(本年6月に就任した鈴木信輝氏)が大ナタを振るった結果。英断である」とのことでした。

規模拡大で“平凡化”→低価格ブランドに追いつかれる

3ブランドが低迷した理由は様々考えられますが、共通するのは、
 ・若い世代の人口が25年前よりも減っていて市場自体が縮小していること
 ・低価格ブランドの商品デザインが遜色なくなってきて客を奪われた
 ・初期の顧客が加齢していく中で次の世代以降の若い客を取り込めなかった
の3点ではないかと思います。

一方で異なる点もあります。
オゾックとアクアガールの場合、ブランドの売り上げ規模が拡大するごとに、初期のクリエイティブな雰囲気作り、商品デザイン、店舗内装がどんどん失われていき、気が付くと、ありふれた平凡なSPAブランド化してしまっていたということが、低迷の理由の一つだと感じます。

平凡なSPAブランド化してしまえば、ユニクロやZARAを筆頭とする大手の低価格SPAブランドに対して勝ち目はありません。これはオゾックに限ったことではありません。セレクトショップとしてスタートしたアクアガールも平凡なSPAブランド化してしまいました。

セシルマクビーはもとからそこまで「クリエイティビティ溢れる」タイプのブランドではありませんでした。どちらかというと、顧客の欲しがるものを臨機応変に素早く展開していた元祖ファストファッションみたいな部分がありました。

しかし、90年代後半から2005年くらいまで人気だったギャル系ファッション、セクシーカジュアル系というジャンルを支持する人が減ってしまいました。若い女性の多くが好むファッションではなくなってしまいました。こうなると、ブランドが永続するにはテイストを変えなくてはなりませんが、それもまた必ずしも成功するとは限りません。ブランドのテイストを変えたために既存顧客が離れ、新規客は取り込めないという場合もあります。

セシルマクビーが無くなると発表された直後からSNSには愛惜のコメントが並びましたが、そのほとんどは中年世代だったように見えました。固定客はそのまま加齢し、新しい若い世代を取り込めていないことがSNSにも表れていたように感じます。

そしてこれはオゾック、アクアガールでも同様でした。ある新聞記事で「寂しくなる」という消費者コメントが掲載されていたのですが、年齢はなんと65歳だったので驚きました。オゾックのターゲットってそんな年齢層でしたっけ?

ブランドは1世代30年を超えて存続するのは無理なのか

3つのブランドともにだいたい30年前後で終わってしまうことになったわけですが、ブランドの寿命というのは30年くらいなのかもしれません。20歳向けに作ったブランドがあったとして、30年後にはその時の顧客は50歳になっているわけですから、30年前と同じテイストでは顧客としてはもう着られないということになります。

それを避けるためには、定期的に顧客の若返りを図らねばならないということになります。なかなか難しいことですが、それができると50年、100年と続くブランドになり得る可能性が高まります。

それにしても、バブル崩壊からアパレル不況と呼ばれた90年代後半ですが、実は、アパレルでは大ヒットが連発されていました。百貨店の婦人服の売上高のピークはバブル期ではなく、97年だというデータもあります。

オゾックの登場と大ヒット、レーヨンソフトジーンズブーム、ビンテージジーンズブーム、アムラーによるバーバリーブルーレーベルブーム、セシルマクビーによるギャルファッションブーム、裏原宿ブームと、2020年の現在からすると考えられないほど、毎年のようにファッションで大ブームが起きていたのが90年代でした。

恐らく、今後、このようなファッションブームの連発は起きないでしょう。洋服を主体としたファッションはそこまでカネをかけて自己表現すべき対象ではなくなってしまいました。それよりも体型維持や筋トレ、メイクや髪型、などトータルでのバランスを取ることがファッション的に重視されるようになったと感じます。

90年代を代表したブランドが3つも消えることになりましたが、それは90年代的なファッション消費が終わったということを表しているのかもしれません。(みなみ・みつひろ=フリージャーナリスト)

著者プロフィール
1970年生まれ。繊維業界紙記者としてジーンズ業界のほか紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 退職後は量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。公式ブログはこちら


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